方程式の実数解の個数に関する問題の例
今回紹介する問題は、方程式の実数解の個数を求める問題や個数に応じた定数$\,a\,$を求める問題ですが、高校三年生の数Ⅲの範囲の問題で二次関数以外です。
二次関数であれば、判別式を使って簡単に求めることができますが、それ以外の複雑な関数だと微分を使って求めることになります。
①$\,$次の方程式の解を求めよ。
$$-log\,x+\frac{1}{log\,x}=0$$
②$\,a\,$を定数とするとき、次の方程式の異なる実数解の個数を求めよ。
$$ae^{-\frac{1}{2}x^2}=\frac{1}{2}(2x+5)$$
③$\,$次の方程式が解をもつように実数$\,a\,$の範囲を求めよ。
$$a\,sin^2{x}+sin\,x-2a+1=0$$
それぞれについて後程例題で解いて説明します。
以上の3種類がよくある問題系統です。
方程式の解き方
①$\,f(x)=0\,$の解を求める
上の例の①のような問題のことです。
このような問題の場合は、$f(x)\,$のグラフの形を考えてから解くことで解答の正確性が上がります。$f(x)=0\,$においてグラフでの考え方は、左辺の関数$\,f(x)\,$と、右辺の$\,y=0\,$の交点(共有点)が答えになります。
しかし、実際には、基本的な解き方はそのまま$\,f(x)\,$が$\,0\,$になるときの$\,x\,$の値を求めるだけです。あくまで、正解への正確性が上がるだけです。
$x^2-4=0\,$の値を求めるときに普通に式から求めた答えは、
$$\begin{align} x^2&=4\\ x&=\pm 2 \end{align}$$ となりますが、ここで、グラフで考えます。
与式から、左辺を$\,f(x)=x^2-4\,$として、右辺を$\,y=0\,$とします。

例題1
定義域を考えます。$log\,x\,$より、$x > 0\,$
また、分母が$\,0\,$になってはいけないので、$log\,x\neq 0\,$より、$x\neq 1$
2つをまとめることで定義域は、
$$x > 0\,,\quad x=1$$
となります。ここで、$f(x)=-log\,x+\frac{1}{log\,x}\,$とおくと、
$$\begin{align}
f'(x)&=-\frac{1}{x}+\frac{-1\cdot (log\,x)’}{(log\,x)^2}\\
&=-\frac{1}{x}+\frac{-\frac{1}{x}}{(log\,x)^2}\\
&=-frac{1}{x}\left(1+\frac{1}{(log\,x)^2}\right)
\end{align}$$
そして、$f'(x)=0\,$になるのは、$1+\frac{1}{(log\,x)^2}\neq 0\,$なのでない。
よって、定義域において増減表は、
$\begin{array}
{|c|cccc|}\hline x&0&\cdots&1&\cdots\\
\hline f'(x)&&-&&- \\
\hline f(x)&×&↘&×&↘ \\
\hline
\end{array}$
また、
$\begin{align}
&\displaystyle\lim_{x→+0}\,\left(-log\,x+\frac{1}{log\,x}\right)=-(-∞)+0=∞\\
&\displaystyle\lim_{x→1-0}\,\left(-log\,x+\frac{1}{log\,x}\right)=0+(-∞)=-∞\\
&\displaystyle\lim_{x→1+0}\,\left(-log\,x+\frac{1}{log\,x}\right)=0+(∞)=∞\\
&\displaystyle\lim_{x→∞}\,\left(-log\,x+\frac{1}{log\,x}\right)=-(∞)+0=-∞
\end{align}$
増減表と極限から、x軸($y=0$)との交点は2つになるので解は2つになります。

このことを踏まえて、解を求めます。解は2つ存在して、それを$\,x_{1}\,,\quad x_{2}\,$とすると、1つは$\,0 < x_{1} <1\,$、もう1つは$\,1 < x\,$となるはずです。
もとの式$\,-log\,x+\frac{1}{log\,x}=0\,$から、
$$\begin{align}
log\,x&=\frac{1}{log\,x}\\
(log\,x)^2&=1\\
log\,x&=\pm1\\
x&=\frac{1}{e}\,,\quad e
\end{align}$$
これは、$\,0 < \frac{1}{e} <1\,$と$\,1 < e\,$を満たしています。
②$\,af(x)=g(x)\,$の解の個数を求める
上の例の②のような問題のことです。
これは、関数$\,y=af(x)\,$と関数$\,y=g(x)\,$との交点(共有点)の個数を求めれば、それが解の個数になります。
ただし、そのまま求めようとはせず少し変形します。
$af(x)=g(x)\,$より、
$$a=\frac{g(x)}{f(x)}$$
となり、$\frac{g(x)}{f(x)}=h(x)\,$とすれば、
$$a=h(x)$$
つまり、関数$\,y=h(x)\,$と関数$\,y=a\,$との交点(共有点)の個数を求めれば、それが解の個数になるということになります。
そこから、交点(解)の個数に応じた$\,a\,$の範囲を求めます。
例題2
与式を$\,a=f(x)\,$の形に変形します。
$$a=\frac{1}{2}(2x+5)e^{\frac{1}{2}x^2}$$
であるから、$f(x)=\frac{1}{2}(2x+5)e^{\frac{1}{2}x^2}\,$とおくと、
$$\begin{align}
f'(x)&=e^{\frac{1}{2}x^2}+\frac{1}{2}(2x+5)\cdot xe^{\frac{1}{2}x^2}\\
&=\left\{1+\frac{1}{2}x(2x+5)\right\}e^{\frac{1}{2}x^2}\\
&=\frac{1}{2}(2x+1)(x+2)e^{\frac{1}{2}x^2}
\end{align}$$
そして、$f'(x)=0\,$となるのは、$x=-2\,,\quad -\frac{1}{2}$
よって、増減表は、
$\begin{array}
{|c|ccccc|}\hline x&\cdots&-2&\cdots&-\frac{1}{2}&\cdots\\
\hline f'(x)&+&0&-&0&+ \\
\hline f(x)&↗&\frac{1}{2}e^{2}&↘&2e^{\frac{1}{8}}&↗ \\
\hline
\end{array}$
また、
$\begin{align}
&\displaystyle\lim_{x→-∞}\,f(x)=-∞\\
&\displaystyle\lim_{x→∞}\,f(x)=∞
\end{align}$
よって、$ae^{-\frac{1}{2}x^2}=\frac{1}{2}(2x+5)\,$の実数解の個数は、関数$\,y=f(x)\,$と直線$\,y=a\,$の交点(共有点)の個数になるので、
$a\,$の値を変化させることで、$y=a\,$が上下して交点の個数が変わります。
グラフの形は増減表から以下のようになり、

$\frac{1}{2}e^{2} < a < 2e^{\frac{1}{8}} \,$のとき、3個
$a = \frac{1}{2}e^{2}\,,\quad 2e^{\frac{1}{8}} \,$のとき、2個
$a < \frac{1}{2}e^{2}\,,\quad 2e^{\frac{1}{8}} < a\,$のとき、1個

③$\,$解をもつための$\,a\,$の範囲を求める
上の例の③のような問題のことです。
②と同じように、まずは、$a=h(x)\,$の形にすることから始めます。
このとき、③と同じ種類の問題なら、$y=h(x)\,$は値域($y\,$の範囲)が決められている問題になるので、値域に収まるように、$a\,$の値の範囲を決めます。
つまり、関数$\,y=h(x)\,$と関数$\,y=a\,$との交点(共有点)があることが解をもつ条件です。
例題3
与式を$\,a=f(x)\,$の形に変形します。
$$\begin{align}
a(2-sin^2x)&=sin\,x+1\\
a&=\frac{sin\,x+1}{2-sin^2x}
\end{align}$$
$sin\,x=t\,$とすると、($-1\leqq sin\,x\leqq 1\,$より、$-1\leqq t\leqq 1\,$となる。)
$$a=\frac{t+1}{2-t^2}$$
となります。ここで、$f(t)=\frac{t+1}{2-t^2}\,$とおくと、 最初の$\,x\,$の方程式が解をもつためには、関数$\,y=f(t)\,$と直線$\,y=a\,$が交点(共有点)をもつことが条件になります。
次に、増減表を書くために微分します。
$$\begin{align}
f'(x)&=\frac{1\cdot(2-t^2)-(t+1)\cdot (-2t)}{(2-t^2)^2}\\
&=\frac{t^2+2t+2}{(2-t^2)^2}
\end{align}$$
そして、$f'(x)=0\,$となるのは、$t^2+2t+2=0\,$のときだが、解の公式を用いて解がないことが分かります。
よって、$-1\leqq x\leqq 1\,$における増減表は、
$\begin{array}
{|c|ccc|}\hline x&-1&\cdots&1\\
\hline f'(x)&&+& \\
\hline f(x)&0&↗&2 \\
\hline
\end{array}$
つまり、$f(t)\,$は$\,-1\leqq t\leqq 1\,$において、$0\leqq f(t)\leqq 2\,$になるので、
関数$\,y=f(t)\,$と直線$\,y=a\,$が交点をもつためには、$0\leqq a\leqq 2\,$となります。


練習問題

$$\begin{align} f'(x)&=\frac{(e^x-1)\cdot x-(e^x-x)\cdot 1}{x^2}\\ &=\frac{xe^x-x-e^x+x}{x^2}\\ &=\frac{e^x(x-1)}{x^2} \end{align}$$ そして、$f'(x)=0\,$となるのは、$x=1\,$
よって、増減表は、
$\begin{array} {|c|ccccc|}\hline x&\cdots&0&\cdots&1&\cdots\\ \hline f'(x)&-&&-&0&+ \\ \hline f(x)&↘&×&↘&e-1&↗ \\ \hline \end{array}$
また、$f(t)=\frac{e^x-x}{x}=\frac{e^x}{x}-1\,$より、
$\begin{align} &\displaystyle\lim_{x→+0}\,\left(\frac{e^x}{x}-1\right)=\frac{1}{0}-1=∞\\ &\displaystyle\lim_{x→-0}\,\left(\frac{e^x}{x}-1\right)=\frac{1}{-0}-1=-∞\\ &\displaystyle\lim_{x→∞}\,\left(\frac{e^x}{x}-1\right)=∞\\ &\displaystyle\lim_{x→-∞}\,\left(\frac{e^x}{x}-1\right)=\frac{1}{e^∞\cdot ∞}-1=-1\\ \end{align}$
$ax+x=e^x\,$の実数解の実数解の個数は、関数$\,y=f(x)\,$と直線$\,y=a\,$の交点(共有点)の個数になるので、増減表と極限から
$-1\leqq a < e-1\,$のとき、0個
$a < -1\,,\quad a=e-1\,$のとき、1個
$e-1 < a\,$のとき、2個

$$a=e^{-\frac{x^2}{2}}$$ ここで、$f(x)=e^{-\frac{x^2}{2}}\,$とおくと、
$$f'(x)=-xe^{-\frac{x^2}{2}}$$ そして、$f'(x)=0\,$になるのは,$x=0\,$
よって、増減表は、
$\begin{array} {|c|ccc|}\hline x&\cdots&0&\cdots\\ \hline f'(x)&+&0&- \\ \hline f(x)&↗&1&↘ \\ \hline \end{array}$
また、
$\begin{align} &\displaystyle\lim_{x→\pm ∞}\,\left(e^{-\frac{x^2}{2}}\right)=0 \end{align}$
よって、解をもつには、$y=f(x)\,$と$\,y=a\,$が共有点を持てばいいので、増減表と極限から
$$0 < x\leqq 1$$

まとめ
$$a=f(x)$$ と変形して、関数$\,y=f(x)\,$と直線$\,y=a\,$との共有点を考えることで、求められます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

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