・平方完成
極値を持たない条件
極値が存在するときその極値の点において次のことが成り立っています。
関数$\,f(x)\,$を微分した導関数$\,f'(x)\,$において、ある任意の点$\,x=a\,$で、
$f'(a)=0\,$が成り立ち、$x=a\,$の前後で$\,f'(x)\,$の符号が変わる。
これが極値になる条件です。
これに対して今回の話の中心は「極値を持たない条件」なので、つまり、これとは反対のことを考えればいいわけです。
関数$\,f(x)\,$を微分した導関数$\,f'(x)\,$において、ある任意の点$\,x=a\,$で、
$f'(a)=0\,$が成り立つとしても、$x=a\,$の前後で$\,f'(x)\,$の符号が変わらない。
もしくは、
そもそも、$f'(a)=0\,$が成り立つ$\,x=0\,$が存在しないで、常に単調増加($f'(x)>0$)(単調減少($f'(x) < 0$)になっている。
”もしくは、”となっているので2つの条件が書いてありますが、
これをまとめて1つにすると「極値を持たない条件」は、
定義域内では常に$\,f'(x)\geqq 0\,\,(f'(x)\leqq 0)\,$となる
ということです。
解き方
極値を持たない関数の条件は、
【条件】定義域内では常に$\,f'(x)\geqq 0\,\,(f'(x)\leqq 0)\,$となることです。
条件が成り立つことを確認する方法は、
$f'(x)\,$がどんなグラフの形の関数になるか考えることです。

グラフがx軸より上にあれば、$\,f'(x)\geqq 0\,$を満たし、

グラフがx軸より下にあれば、$\,f'(x)\leqq 0\,$を満たすと分かります。
では、$f'(x)\,$がどんなグラフになるかの確認方法ですが、
確認する方法は、大きく分けて2つです。
- $f'(x)\,$のグラフの増減を$\,f^{\prime\prime}(x)\,$から確認する方法。
- $f'(x)\,$が2次関数の形になった場合、平方完成して確認する方法。
2つの違いは、
1つ目は、ほとんどの関数においてで使える方法
2つ目は、特定の関数のときにしか使えない方法
どんな関数でも使える確認方法
1つ目の方法「$f'(x)\,$のグラフの増減を$\,f^{\prime\prime}(x)\,$から確認する方法」
$f(x)\,$のグラフの形なら$\,f'(x)\,$を求めて増減表を書きグラフの概形を考えていました。
それと同じようにするだけですが、
$f'(x)$のグラフの形なら$\,f^{\prime\prime}(x)\,$を求めて増減表を書きグラフの概形を考えます。
例題
$$f(x)=x\,log\,x-kx^2$$
まずは、定義域を決める必要があるので、
真数条件つまり、$log\,x$より、$x > 0$となります。
極値を持たない条件を考えるので、微分します。
$$f'(x)=log\,x+1-2kx$$
極値を持たないためには、$f'(x)\geqq 0\,$もしくは,$\,f'(x)\leqq 0\,$である必要がある。
この問題の場合、$f'(x)\,$の符号が調べにくいので、$f'(x)\,$がどのようなグラフになるかを考えます。
$f(x)\,$がどのようなグラフになるかを調べるのには、$f'(x)\,$を考えました。
それと同じように、
$f'(x)\,$がどのようなグラフになるかを調べるには、$f^{\prime\prime}(x)\,$を考えます。
$$f^{\prime\prime}(x)=\frac{1}{x}-2k$$
そして、$f^{\prime\prime}(x)=0\,$となるのは、$x=\frac{1}{2k}$
よって、定義域$\,x>0\,$において、増減表は、
$\begin{array}
{|c|cccc|}
\hline x&0&\cdots&\frac{1}{2k}&\cdots \\
\hline f^{\prime\prime}(x)&&+&0&- \\
\hline f'(x)&&↗&f’\left(\frac{1}{2k}\right)&↘ \\
\hline
\end{array}$
増減表から$\,f’\left(\frac{1}{2k}\right)\,$のときが、$f'(x)\,$が最大になるときなので、
よって、極値を持たない条件「常に$\,f'(x)\leqq 0\,$」となるのは、$f’\left(\frac{1}{2k}\right)\leqq 0\,$となるときです。
$$\begin{align}
f’\left(\frac{1}{2k}\right)&=log\,\frac{1}{2k}+1-2k\cdot \frac{1}{2k}\\
&=-log\,2k
\end{align}$$
つまり、
$$\begin{align}
-log\,2k&\leqq 0\\
log\,2k&\geqq 0\\
2k&\geqq e^0\\
k&\geqq \frac{1}{2}
\end{align}$$
3次関数のみに使える確認方法
2つ目の方法「$f'(x)\,$が2次関数の形になった場合、平方完成して確認する方法」
2次関数は大体の形が決まっていて、頂点の位置さえ決まってしまえば、すべてが決まります。そのため頂点の座標を求めるために平方完成をします。
$$f'(x)=ax^2+bx+c$$
$f'(x)\,$を上のように設定すると、平方完成して
$$f'(x)=a(x+\frac{b}{2})^2+c-\frac{b^2}{4}$$
$a > 0\,$の場合

つまり、下に凸の形になり、頂点が最小値になるので
$$c-\frac{b^2}{4} \geqq 0$$
頂点が0以上になれば、極値を持たない条件を満たすので$\,f(x)\,$が極値を持たなくなる。

つまり、上に凸の形になり、頂点が最大値になるので
$$c-\frac{b^2}{4} \leqq 0$$
頂点が0以下になれば、極値を持たない条件を満たすので$\,f(x)\,$が極値を持たなくなる。
例題2
$$f(x)=\frac{1}{3}x^3-x^2+2x$$
$$f'(x)=x^2-2x+2$$
これを平方完成すると
$$f'(x)=(x-1)^2+1$$
となります。つまり、図的には以下のような感じで、

常に$\,f'(x)\geqq 0\,$になっていることが分かります。よって、極値を持たない条件を満たしている。
$f(x)=\frac {1}{3}x^3-x^2+2x\,$は極値を持たない
練習問題
$$f(x)=x(log\,x)^2+kx$$
$$\begin{align} f^{\prime\prime}(x)&=2\,log\,x\cdot\frac{1}{x}+\frac{2}{x}\\ &=\frac{2}{x}(log\,x+1) \end{align}$$ ここで、$f^{\prime\prime}(x)=0\,$となるのは、
$$\begin{align} log\,x&=-1\\ x&=\frac{1}{e} \end{align}$$ これにより、増減表は、
$\begin{array} {|c|cccc|} \hline x&0&\cdots&\frac{1}{e}&\cdots \\ \hline f^{\prime\prime}(x)&&-&0&+ \\ \hline f'(x)&&↘&f’\left(\frac{1}{e}\right)&↗ \\ \hline \end{array}$
よって、$f’\left(\frac{1}{e}\right)\,$は最小値になるので、
$f’\left(\frac{1}{e}\right)\geqq 0\,$であれば、$f'(x)\geqq 0\,$となり、極値を持たない条件を満たす。
$$\begin{align} f’\left(\frac{1}{e}\right)&=(log\,\frac{1}{e})^2+2\,log\,\frac{1}{e}+k\\ &=-1+k \end{align}$$ したがって、
$$\begin{align} -1+k&\geqq 0\\ k&\geqq 1 \end{align}$$
$$f(x)=-x^3-3x^2+kx$$
$$\begin{align} f'(x)&=-3(x^2+2x)+k\\ &=-3(x+1)^2+k+3 \end{align}$$ $f'(x)\,$は上に凸の形なので、頂点が最大値になる。よって、頂点が0以下であれば$\,f'(x)\leqq 0\,$になるので極値を持たなくなる。
したがって、
$$\begin{align} k+3&\leqq 0\\ k&\leqq -3 \end{align}$$
まとめ
定義域内では常に$\,f'(x)\geqq 0\,\,(f'(x)\leqq 0)\,$となる。
そして、解き方は$\,f'(x)\,$のグラフを$\,f^{\prime\prime}\,$や平方完成から求めて、確認する。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

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